フランスは、質、量ともに世界一を誇るブランデー王国。
フランスでは、蒸留酒のことを、「生命の水」を意味する ” オー ド ヴィー ” といいますが、
以前はグレープ ブランデーをいうものでした。
しかし現在では、ブドウ以外のものから造られる蒸留酒の総称になりました。
オー ド ヴィーの種類
オー ド ヴィーは4タイプ、6種類に分けられます。
オー ド ヴィー ド ヴァン(Eau de vie de vin)/ ワインを蒸留したもの。
オー ド ヴィー ド マール(Eau de vie de marc)/ ワインの搾りかすを蒸留したもの。
オー ド ヴィー ド フリュイ(Eau de vie de fruits)/ リンゴやナシ、ベリーなどの果実類を蒸留したもの。
オー ド ヴィー ド セレアル(Eau de vie de céréales)/ 大麦、ライ麦、トウモロコシ、米などの穀物を蒸留したもの。
オー ド ヴィー ド チュベルキュール(Eau de vie de tubercules)/ ジャガイモのような塊茎(かいけい)類を蒸留したもの。
オー ド ヴィー ド カンヌ ア シェルク(Eau de vie de canne à sucre)/ サトウキビを原料とした、ラム酒みたいなもの。

コニャック Cognac
フランスのブランデーといえば、誰もが名を上げるほど有名なのがコニャックです。
コニャックは、コニャック地方で造られるブランデーで、原産地統制呼称法(AOC法)で使うブドウの品種、生産地域、蒸留方法が規定されています。
AOC法では8種類のブドウの品種が決められていますが、この地区ではほとんどがユニ ブラン種(サンテ ミリオン種ともいいます。)です。
ユニ ブラン種は酸が多く、いいワインにならないのですが、ブランデーにすると、熟成中に酸が芳香成分に変わり、フルーティーで豊かな表情をしたブランデーになります。
貯蔵用の樽はリムーザン地方のオークで作られてた樽で、長期熟成します。
コニャックは、熟成年の古い原酒と若い原酒をブレンドして造られますが、格付けは若い原酒の年数によって決められます。

地区による区分
コニャックの風味は、ブドウの栽培地域の土壌や気候によって微妙に違ってくるので、AOC法は6つの地区に分けています。
1)
グランド シャンパーニュ地区
2)
プティット シャンパーニュ地区
3)
ボルドリ地区
4)
ファン ボア地区
5)
ボン ボア地区
6)
ボア ゾルディネール地区
グランド シャンパーニュとプティット シャンパーニュは薫り高い品質の高く、これらをブレンドしたブランデーはフィーヌ シャンパーニュと呼ばれ、高級コニャックになります。
フィーヌ シャンパーニュにボルドリの原酒を加えると、よりふくよかな厚みが増すので、有名銘柄はこの3つをブレンドしたものが多くあります。
ファン ボアはフルーティーでライトな酒質で、熟成は短期が多くなります。
ボン ボアは格が下がり、高級品にはなりません。
ボア ゾルディネールのブランデーは低価格で、スーパーなどでの一般向きのブランデーになります。
ただこの地区にある、ラ ロッシェル港の沖合にあるレ島産のコニャックは、塩分を含む土壌や海藻を肥料として育ったユニ ブラン種で造られ、辛口でソルティな味わいが他とは違って人気となっています。
アルマニャック Armagnac
コニャックとともにフランスを代表するブランデーであるアルマニャックは、フランス南西部のガスコーニュ地方で造られるブランデーです。
AOCで認められ、アルマニャックと表示することが許されていますが、さらに3つに分けられた地区も、原産地名として認められています。
1)
バ アルマニャック地区
2)
テナレーズ地区
3)
オー タルマニャック地区
です。
栽培が許されているブドウの品種は数種類ありますが、主にユニ ブラン種とバコ22-Aです。
熟成は1年以上で認められていますが、コニャックと違うのは、5年以上でナポレオンの表示が認められていることです。XO、エクストラ(EXTRA)は6年以上の熟成です。
樽材はガスコーニュ産のブラック オークで、熟成期間は短くなります。

ヴィンテージ アルマニャック
アルマニャックには単年度ごとの原酒を使い、ほかの年の原酒とブレンドするこはしないで、ヴィンテージ アルマニャックとして昔から販売してきました。
1993年に「ヴィンテージ アルマニャック定期管理法」ができて以来、最低でも10年以上熟させることや、ビンや樽で熟成させている原酒のリスト、出荷から販売まで、数量などの管理がしっかりなされています。
ナポレオン Napoléon
フランスのAOC認定のブランデーは、6年以上熟成させないとナポレオンの記号はつけられません。
AOC認定外のブランデーには規制がないので、普及品のブランデーにもナポレオンのラベルを付けることは自由です。
値段の安いナポレオンブランデーは、このタイプです。
なぜナポレオンの名前がついたのかにはいろいろな説があります。
おもなものに、
〇 ナポレオンに、できたコニャックを献上したら大いに気にいられ褒められたから、
〇 アウステルリッツの戦いのとき、近衛兵が飲んでいた自家製のコニャックをナポレオンが飲んで褒めたから、
〇 ナポレオンに男子が誕生したのを記念してその年のコニャックをナポレオンと呼び、そのあとも古酒をナポレオンと呼ぶようになった、
などがあります。
法律の熟成年数による基準
ブランデーは、AOC以外の名称で熟成年数がわかるようになっています。
- VS | 1年から3年
- VSOP | 4年から9年
- Napoléon | 6年から9年
- Hors d'Age | 10年以上
- XO | 10年以上
オールダージュ(Hors d'Age)は、年数外という意味で、何年ものかわからないくらい古いということです。
カルヴァドス Calvados
フランス北西部の特産品の、リンゴを原料にしたブランデーで、19世紀初頭から地名をとってカルヴァドスと呼ばれています。

歴史的には1553年の古文書に記録が残っていて古いものなのですが、フランス全土に知られるようになったのは、第一次大戦以後のことだそうです。
原産地は3つに区分され、それぞれで蒸留法などが違っていて、
- カルヴァドス デゥ ペイ ドージュ/ リンゴの栽培に最も適した地区は最も良質のカルヴァドスを産出するため、コニャックと同じ単式蒸留機を使うことが義務付けられています。
- カルヴァドス ドンフロンテ / リンゴの醸造酒シードルに、洋ナシの醸造酒ポワレを30%以上ブレンドして、使う蒸留機も決められています。ポワレが含まれるので、まろやかな風味になります。
- カルヴァドス / 上記以外のノルマンディー、メーヌ地方で造られるカルヴァドスです。
マール(eau vie de marc)/ 粕取りブランデー
ワインの搾りカスを ” marc(マール)” といいますが、これを蒸留して造ったブランデーです。
製品の品質を保つために1941年に施工されたAR法により、14の生産地方が地名表示を許されています。
赤ワイン用の搾りカスはできるだけ酸化させないで蒸留し、白ワイン用の搾りカスは、水で洗って発酵させた後に蒸留します。主に単式蒸留機を使いますが、特別な規制はないそうです。
オーク樽で熟成し、蒸留後の高いアルコール分を水を加えて40%まで下げますが、ARにより定められたものには45%以上と定められたものもあります。
マール ドゥ ブルゴーニュとマール ドゥ シャンパーニュが特に有名です。